十人十福

Vol.02

多様な学びに触れられる環境で
自らと社会を多角的に見つめ
自分なりの考えを磨く。

北野 友菜さん

人間科学科 3年

四天王寺高等学校を卒業後、かねてより興味があった死生学を学ぶため、人間福祉学部 人間科学科に進学。グリーフケアの分野を中心に学びながら、副専攻プログラムで商学部の学位取得もめざす。大学生活をより充実したものにするため、サークル活動や大学が開講する起業講座などにも積極的に参加している。

#人間科学#ゼミ#課外活動

多様な学びや価値観に触れ、芽生えはじめた当事者意識。

私は幼い頃から人一倍「死」に対する恐怖心がありました。高校生の時にたまたま本屋で「死生学」の本を見つけたことをきっかけに、死ぬことに対して自分の抱く感情の原因を明らかにすることで、死への恐怖を和らげることができるのではないかと考え、死生学を学べる本学の人間福祉学部を受験しました。
実際に死生学だけではなくデス・エデュケーション、悲嘆学などの授業を履修し学んでいます。また、人間科学内でも「こころ」と「身体」の両面からアプローチでき、バックグラウンドの異なる学生と交じり合うことで、自分の価値観や視野を広げることができました。

加えて、死生学を学ぶために人間科学科に入学しましたが、人間科学科以外の2学科(社会福祉学科・社会起業学科)の分野も横断しながら学ぶことができます。バングラデシュで貧困問題について取り組む友人や施設での実習に臨む友人など、周囲から多様でリアルな話を聞くこともでき、社会問題について自分の視点から考えるようになりました。今まで興味がなかった分野にも触れたことで社会問題に対する当事者意識をもちはじめ、学科の垣根を越えて積極的に学んでいます。

よく、何かの社会問題に対して「○○問題」と定義しがちですが、私は当事者以外の人たちが一方的に問題視していること自体がおかしいのではと思っています。周りや社会が社会問題と決めつけることで、当事者が劣等感を抱いてしまう側面があるのではとの視点を持つようになり、それらを含めて考えることができるようになったことは成長した点だと思っています。

死の悲しみ、死への恐怖と向き合う。

ゼミでは、坂口先生のご指導のもと、親しい人を亡くした人々のケア(=グリーフケア)について専門的に学んでいます。現在は、家族を亡くした親子の関係をテーマとした絵本作りや、毎年ゼミで主催している「生命のメッセージ展」に向けて準備を進めています。このメッセージ展では理不尽に命を奪われた人たちがメッセンジャーとなり、普段あまり「死」を意識しない方にも、改めて生死についてじっくりと向き合う機会を提供したいと思っています。
実際にご遺族の方とお話しする機会もありますが、そのときは相手の価値観や考えを否定しないことを心がけています。私自身、親族を亡くした際に、悲しみよりも怒りを強く感じ、そんな自分に自己嫌悪感を抱いてしまったことがありますが、悲嘆学の講義を通して「悲嘆」には悲しみだけではない感情の反応が含まれるのだと知りました。しかし、このような感情の正体を理解できても悲しみが癒えることはなく、受け入れるには時間がかかりました。頭でわかっていても感情は追いつかないということを実感して以来、死別による感情の渦の中にいる人には、自分の意見を伝えるのではなく相手に寄り添うようにしています。こうしたゼミの学びを通じて、死をただの恐怖の対象として忌避するのではなく、徐々に受け入れてみようと気持ちが変化しつつあります。

自分の興味と結びつけて、社会の課題を考える。

人間福祉学部では多様な社会のテーマに触れる機会があり、自分の関心や経験と結びつけて学びを広げられます。最近、死生学の他に探求しているのは、自らをLGBTQ+と認識している人々がどんな判断基準で自身をそのように感じるのかについて。その根本にある、人に対して感じる「好き」という感情の正体について考えています。「好き」は人によって感じ方やその程度が異なるものです。そう感じたのは、スピリチュアリティ演習の授業でのこと。「家族」「信頼」といった抽象的なものについて学生同士で意見を交わす中で、学生間でも様々な見方があり、こうした曖昧な概念は人によって解釈が変わることを実感しました。それまではLGBTQ+についてあまり馴染みがなかったのですが、自分の関心がLGBTQ+と関わりのあるものだと気づいてから、自分なりの視点をもちながら考えを深められるようになりました。

より密度の濃い学生生活を送りたい。

大学生活を充実させたいという強い思いがあり、これまでさまざまな活動に取り組んできました。
ダンスサークルに所属していましたが、コロナ禍の影響であまり活動できない状況が続いたこともあり、学生目線で本学の魅力を発信する大学公認の学生広報団体にも参加。他キャンパスの意欲的な学生や尊敬できる先輩とともに、責任感をもって活動しています。2年次には、半年間にわたって起業と経営スキルを学ぶSTARTUP ACADEMYに参加しました。チームで一からビジネスを立ち上げ、2週間で売り上げを競います。私たちのチームは、関西学院大学を志望する受験生を対象とした「zoom自習室」をひらき、なんとか売り上げを出すことに成功。他学部・他学年の学生とともに起業に必要なプロセスを経験できただけでなく、組織活動における自分の適性を知れたことも大きな収穫でした。
また学業面では、マルチプル・ディグリー制度を利用して2学部の学位取得をめざしています。人間福祉学部では自分の興味を追求していましたが、企業などでの仕事に活かせる実学に関心をもち、商学部を選択。時間に妥協することなく、自分と将来に向き合うことを意識しています。

「福祉」という学部名にとらわれず、自らの学びを広げられる学部。

人間福祉学部では、介護やケアのことだけを学ぶと思われがちですが、そうではありません。私も当初は同じようなイメージをもっていましたが、日々の生活で触れるすべての事柄が問いとして存在しているということを実感してきました。課題も自分の意見を書くものが多いと感じており、また演習での一つのテーマに対するアプローチも学科が違えば十人十色。答えのない問いについて考えを深めることが好きな方にはぴったりの学部だと思います。同じ考えの人はおらず、皆異なる意見をもっています。自分と違う部分もあるけど、共感できるところもある。そんな多様な背景をもつ学生たちや先生方との対話を通して、自分なりの切り口で考えを研ぎ澄ましていけるのが、人間福祉学部の魅力です。