十人十福

Vol.11

「野外教育」に出合い、
物事を論理的に考えるようになった。
学びを生かし、人の心を動かせる教師に。

青山 ひかるさん

人間科学科 2年

大阪府立和泉高校出身。高校時代に習った体育教師のように生徒の気持ちが分かる教師になりたいと、身体とこころの両面からスポーツを学べる関⻄学院大学人間福祉学部人間科学科に入学。1年生の春学期に必修科目「人間科学入門」で甲斐知彦教授が専門とする野外教育に興味を持ち、以降、関連する授業を積極的に履修。3 年次より甲斐ゼミに所属することも決まり、今後は野外活動の教育分野への展開について探究をさらに進化させていく。

#人間科学#課外活動#教職#留学

生徒の気持ちかが分かる体育教師を目指したい

高校3 年生の時、成績が上がらず落ち込んでいた時期があり、その時に寄り添ってくれたのが体育の先生でした。体育の授業の後、「今日は活動的じゃなかったな。何か心配な事でも あるのか」と声をかけてくださり、体の動きがいつもと違うことで心の中まで分かるんだ、と感激し、生徒の気持ちが分かり、かつ体育の指導もできる高校の体育教師になりたいと思うようになりました。人間福祉学部人間科学科は、身体とこころの両面からスポーツを学ぶことができると知り、入学しました。
1 年の春学期に履修した必修科目「人間科学入門」は、一人の人間の誕生から最期の時までを、さまざまな先生が順番に解説していくというものでした。甲斐先生が担当された回で、「野外教育で学んだことは普段の活動にも応用できる。学びをすぐ応用するのに野外教育は良い手段である。」と聞き、ものすごく心に引っ掛かりました。どういうことなのか興味を持ち、その意味を理解したくて、2 年生で甲斐先生の野外教育に関する授業を選択しました。

学びをすぐ応用できる「野外教育」の特性を実感した

2 年生の春学期に履修した甲斐先生の「野外教育実習」では、履修期間の最後に、奈良県吉野町で2 泊 3 日の野外活動を行います。事前学習において、キャンプでの気付きや学びを次の体験に生かす「抽象化」と呼ばれる思考方法を学びました。野外活動の目的を確認したり、ロープの結び方を習ったり、現地で作る料理を決めたりと、準備を進めながら、自然環境は 変化が起きやすいため、野外教育は仮説設定と検証のサイクルを使って学びやすいツールだ。 ということも教わりました。さらに、甲斐先生がおっしゃるには、人はものの見方や考え方、 対応の仕方がそれぞれ異なり、それが共有できない人と活動をともにするのは難しいと。約 15人の履修者全員の気持ちをできるだけ合わせるためには仲良くなるのが近道ということで、コミュニケーションを図る時間を取り、キャンプネームも決めました。現地では、野外炊事や山の中を歩いてミッションをクリアしていく活動などを行いました。 野外炊事では火が燃え上がっていたのに誰も見ていなかったという失敗があり、山中では迷子になりました。その理由を班のメンバーで考えた結果、「自然をなめていた」という反省点に行き着き、「自然の中では起こり得るリスクを想定し、それを回避する方法を考えておく」という教訓を得ました。ちょうど次の日は雨予報でしたので、大雨のリスクを想定し、 防寒対策をしっかりしよう、足を滑らさないように気を付けようといったことを全員で共 有しました。翌日すぐに教訓を生かすことができ、甲斐先生がおっしゃっていた「野外教育で学んだことはすぐに応用できる」を実感することができました。

「なぜ」を突き詰めることがより深い理解につながる

2 年生の秋学期はさまざまなテーマをもとにディスカッションを行う「人間科学演習」を履修しています。今までの授業は先生の話を聞く、課題が出ればそれを仕上げるといった受け身のものが多かったのですが、この授業では、先生が述べたことについて、4人の履修学生が「どうしてそう考えたのですか」「なぜ、その活動をしているのですか」といった疑問を先生に投げ掛けます。先生の話に疑問を持つことは新鮮でしたし、先生と会話のキャッチボールをしている感覚がとても面白いです。また、授業では学生が「地頭力を鍛える」という本を読み込み、その内容についてレジュメを作ってプレゼンテーションを行い、質問を受け討論をしながら理解を深めます。自分がプレゼンをする際も、こういう質問が来るかもしれないと予想しておくことがより深い理解につながり、また、さまざまな角度から考えを張り巡らせる癖がつきました。受け身ではない緊張感のある授業は刺激的で、先生や他の学生と意見をやりとりできる実りある時間です。いろいろな情報に対して疑問を持つことから、質の高い考え方ができるようになり、理解を深めることができると教えていただきました。

熱中できるテーマが野外教育で見つかった

この「人間科学演習」では先生と学生4人で1 泊2日のキャンプにも行きました。当日はどしゃぶりの雨で、野外でのプログラムを変更することになりましたが、みんなで話し合い、「合羽を着て野外活動を予定通り行う」「テント内でできることに変更する」「屋根のある所で『地頭を鍛える』について再度考察する」など、さまざまな選択肢を出し、「これとこれは雨が止んだ後にして、今はこれをしよう」と、新たなスケジュールを決めました。
アクシデントにも動じず対応することができたのは、授業の中で論理的に物事を考える大切さを学んでいたからだと思います。まず目的を考え、それに向かってしなければならないことを一つ一つ段階的に決めておいたので、予想外の事態に見舞われても柔軟に対応することができました。座学で得た知識や教えをすぐ実践、実証できるという流れは野外教育ならではのもので、とても面白いと感じています。正直、ここまで熱中できることが大学で見つかるとは思っていませんでした。注力できる研究テーマを見つけることができたので、ゼミも迷わず甲斐ゼミを選びました。

伝える努力を続け、いずれは海外でスポーツを教えたい

私は思ったことをすぐに口に出してしまうタイプでしたが、甲斐先生の授業を受けて、人は論理的に説明しないと納得してくれないことが改めてよく分かりました。アルバイトで小学生に体操を教えているのですが、「静かにしなさい」と言っても静かにはなりません。でも、「今これを聞いておかないとけがをするよ。ちゃんと聞こうね」など、理由や目的をきちんと伝えてあげると納得してくれます。これは、日常のいろいろな場面で応用できます。目指す教師像も、以前は「生徒のことを考えられる教師」くらいのざっくりとしたものでしたが、今は「背景や意図を論理的に伝え、心を動かせる教師」に変わりました。自分だけが理解しているのではなく、相手も理解できる、そしてその心を動かすことができるような教師になりたいと思います。甲斐ゼミでは、卒業までに小学生が野外で使えるアプリを制作します。小学生は理解力も、思考回路も私たちとは全然違います。アルバイト先でも、「先生が何を言っているのか分からない」と言われることがあったので、アプリを作る際も、自分の目線ではなく子ども目線で考えて、子どもに伝わる、子どもの心を動かせるものにしたいです。 これからの学生生活は、野外教育の探究はもちろん英語力のアップにも努めたいと思います。2年生の夏休みに夏季外国語研修として、ニュージーランドのオタゴ大学に1 カ月短期留学しました。卒業までに1年間、語学留学できればと考えていて、甲斐先生に相談中です。 英語力を磨いて、いずれは海外でスポーツを教えてみたいです。後悔することがないよう、 これからもやりたいことには貪欲にチャレンジしていきたいと思っています。