十人十福

Vol.05

フィールドワークや
サモアでの国連ユースボランティア。
現場で培った課題解決力が今に生きている。

樋口 拓己さん

日本IBM株式会社

社会起業学科 2019年卒業

大学内での授業だけでなく、国内外をフィールドに学べる環境が整っているところに引かれ、社会起業学科に入学。大学3年生の時、サモアでの国連ユースボランティアを経験したことで、ビジネスとして社会課題の解決に取り組む必要性を実感。日本IBM株式会社に就職し、現在は近未来の動向について調査・予測を行い、各ステークホルダーと共創し、洞察や知見を発信することに携わる。

#仕事#海外プログラム#IT

孫先生との出会いで大学4年間のロードマップを決定。

高校時代、カナダ交換留学やマレーシア研修など海外で学ぶ機会があり、大学でも日本を拠点に、グローバルな視点を持った社会課題の解決について学びたいと思っていました。また、実際に現場へ出て社会や地域の現実を知りたいとも考えていたので、課題に直面する当事者や課題解決に取り組む団体を訪問し、聞き取り調査などを行うフィールドワークの授業があることも、社会起業学科を選んだ大きな理由です。
実は入学試験の最終面接官が、「グローバル社会における多文化研究」を研究テーマとする孫良教授で、その時に「大学に入ったら気軽に先生の研究室を訪ねておいで」と誘っていただきました。お言葉に甘えて入学早々に訪問したら、大学4年間のロードマップを一緒に作ってくださったのです。孫先生は当時、学内で国連ユースボランティアの運営に携わっており、参加したいことを伝えると、「そのためには英語とITのスキルが必要だ」と。英語には多少なりとも自信があったので、大学ではITスキルの習得を頑張ろうと決意。1年生でITスキルに関する共通科目を取り、3年生で国連ユースボランティアに参加し、孫ゼミに入るという4年間の大まかなスケジュールをこの時に決めました。

1年生秋学期に履修した「社会起業フィールドワーク(海外)」におけるタイでの様子

多様な人たちに自分の意見を伝える貴重な経験。

3年生の時、国連ユースボランティアとして、国連開発計画(UNDP)のサモア事務所で働きました。主な業務の一つが、現地スタッフを対象にしたITスキルの向上サポートです。簡単なソフトの使い方を教えたり、事務所を紹介するサイトを一緒に作ったりしました。もう一つが広報の仕事で、サモアの人々に向けて、国連の活動や取り組みを発信したり、オセアニアの人々に向けて、サモア事務所の活動や取り組みを発信したり。PRイベントの企画や実施にも携わりました。
同僚にはサモア人をはじめ、フランス人やオーストラリア人、ニュージーランド人、アメリカ人がいて、まさに多様性に富んだ職場でした。さまざまな背景や価値観を持つ人たちと一緒に、サモアの社会課題の解決に努めた日々は、国内では得られない貴重な時間となりました。現在の職場である日本IBMも多様性に富んでおり、若手の意見を尊重してくれます。上司にも臆することなく、自信を持って自分の考えやアイデアを話すことができるのは、サモアでの経験のおかげだと思います。

ビジネスとしてボトムアップ的な方法で課題解決を。

UNDPで働いてみて、社会の課題を解決するには国連やNGO・NPOなどの非営利団体に加えて、民間企業の取り組みや活動が必要なのではと感じました。フィールドワークで国内外のNPOを取材した際に支援の限界が見えたこともあり、持続的な課題の解決は、組織だけで行うものではなく、生活者を巻き込んでいく必要があると考えたからです。中でもテクノロジーは1+1を2ではなく、それ以上にすることができると感じ、IT企業を中心に企業研究。当時、黎明期だったブロックチェーン関連のプロジェクトを発表していた日本IBMに興味を持ち、入社しました。
入社後2年間は、ITコンサルタントとして基幹システム導入プロジェクトなどを中心とした大手企業向けのDX(Digital Transformation)推進に従事し、3年目に戦略コンサルタントとしてIBM Future Design Lab.に異動。社内外のステークホルダーと共創し、より良い未来に向けて問題解決につながる知見を発信している部署です。

学生時代のフィールドワークが今につながっている。

IBM Future Design Lab.の業務には、未来を考察し、調査・分析・洞察した内容をまとめて社内外に発信し、検証するという3つのフェーズがあります。現在は主に未来の考察フェーズと検証フェーズのプロジェクトに関わっています。未来の考察フェーズでは、α世代について調査しています。Z世代の次の世代に当たり、2010年から2024年ごろまでに生まれたα世代と呼ばれる人たちがどのような考え方をするのか、何を求めているのか等を考察し、それを資料としてまとめます。そして、まとめた資料を基に、お客さまにα世代向けの新規事業の企画・立案などを行っています。
検証フェーズでは、大手テレビ局と一緒にビジネスコミュニティの企画・運営に取り組んでいます。日本全国のビジネスや社会の問題を解決することを目指しており、そのために他の大手企業やスタートアップと共にオープンイノベーションを実施します。われわれは課題を抱える自治体や企業に話を聞いて、その解決のためのロードマップの策定や、テクノロジーを駆使した社会実装にも携わります。
現場の声を聞き、調査結果を基に仮説を立て、その仮説を検証・立証するという流れは、大学で学んだフィールドワークの授業が今に生きています。学生時代、国内の被差別地域でそこに住む人と支援するNPOを取材した経験や、海外ではタイのマザーハウスと、山岳地域に住む国籍不明の人々を支援するNPOを取材した経験があります。社会起業学科では、学術的な面だけでなく、生活者など現場の声もすくい上げた実用的な面を学ぶことができました。

顧客視点・ユーザー視点を重視したサービス開発に努め専門性を高める。

以前は大手企業のDXの推進といった仕事に携わっていたので、どうしても規模が大きくなり、達成感はあるもののユーザー一人一人の顔までは見えていませんでした。今は「こういうプロダクトやサービスをつくったら消費者がちょっとでも便利になるのでは」というプロジェクトに関われているので、とても面白いし、やりがいも感じます。また、テレビ番組制作のプロジェクトでは、実際に現地に行って生の声を聞いて課題を拾い、それを解決できる戦略を立案し、実際にプロダクトやサービスにまで落とし込むというように、目標とするボトムアップ的な活動ができているのかなと自負しています。これからもCX(Customer Experience)やUX(User Experience)を意識し、消費者やユーザーの視点に立ったプロダクトやサービスの提供に努めたいと思います。そして、自分自身としても戦略コンサルタントとして専門性を高め、キャリアを築いていきたいと考えています。