Vol.06
身に付けたヒューマンスキルで
お客さまの要望に寄り添い、
付加価値のある提案を。
坂本 慎弥さん
西日本電信電話株式会社(NTT西日本)
2019年卒業社会福祉学科
福祉を体系的に学ぶために進学した社会福祉学科では、ゼミでコミュニケーションについて学び、限界集落でのフィールドワークを通して都市部との格差を痛感。地域社会の課題解決に貢献したいとNTT西日本に入社し、現在はコミュニケーション力を生かして金融機関への営業活動を展開している。
具体的数値では測れないヒューマンスキルを学ぶ。
3世代同居で祖母の手助けをすることも多く、常々「人の気持ちが分かる、優しい人間になりたい」と思っていました。まずは福祉を体系的に勉強しようと進学先を探し、学びやフィールドワークの幅広さに引かれて関西学院大学の人間福祉学部に決めました。ゼミも専門や分野を特化せず、汎用性が高いコミュニケーションをテーマとする川島惠美教授を選択。授業は、目を見て話す効果、後ろを向いている人と会話する難しさ・伝わりにくさといった座学で得た知識を即実践してみる内容で、身振り手振りや顔の表情、立ち位置などの外部要因によって言葉の伝わり方は変わり、それに伴い受け取る相手の気持ちも変わるという気付きを得ました。
卒業後、NTT西日本の法人営業部門に配属されて4年、人間福祉学部で良かったと思うのは、お客さまとのコミュニケーションや人を思いやる心といったヒューマンスキルを身に付けられたことです。営業職としてはもちろん簿記や英語などの知識も必要ですが、それらは後追いできます。どれだけお客さまに寄り添えるかという具体的数値で測れないものに関して、大学での勉強が生きていると感じています。
ITを活用しマクロの視点から、地域課題の解決を。
学生時代で一番の経験が、3年時に5泊6日で取り組んだ「福祉社会フィールドワーク」です。三重県松阪市の波瀬地区という山奥の過疎地域で、一人暮らしの80代の男性宅に民泊しながら住民への家計調査を行い、お金の動きなどから都市部との生活の格差を明らかにしました。大きな違いの一つが交通費です。最寄りのスーパーまで約40分、公共交通手段がほぼないので車を使うのですが、ガソリン代などの移動費用が高額になります。それに高齢化が重なると、免許返納といったなかなか難しい問題にもつながります。また、民泊先の男性を地域の人が時折訪ねて様子を見守る光景も、都市部ではあまり見たことがありませんでした。これらの問題は波瀬地区に限らず、全国的な地域課題だと感じました。
就職先をNTT西日本に決めたのは、この都市と地域との格差を目の当たりにしたことが大きな理由です。フィールドワークで地域の課題を得て、そこから何ができるんだろうともやもやしている中で、マクロの視点から解決に貢献したいと考えるようになりました。今後の発展のキーワードはITだと思ったので、社会課題に対してITを活用して地域密着型の取り組みをしている会社はどこだろうか-と考えて、NTT西日本に入社しました。
金融機関の要望に、付加価値のある提案で応えたい。
入社当初から営業部署に所属し、関西の金融機関さんをクライアントとして新たな店舗やATMのインフラ整備、コールセンターシステムの構築、自社サービスの販売などをメインに営業活動をしています。足しげくお客さまのもとへ通い、時には厳しい言葉を頂くこともありますが、ニーズや課題をつかみ、ご要望に最適な、NTT西日本ならではの付加価値のある提案ができた時は営業冥利に尽きます。あるシステム構築の案件に携わった際、当初は旧来と同様のものにする予定だったところを、お客さまが利用しやすい環境を考え、AIを使うことによって話した言葉が文字おこしされるシステムを提案、構築しました。それまで巻き戻して確認していた音声のやり取りがテキストで一目瞭然、効率的になり、感謝の言葉を頂いた時はうれしかったです。システムの基盤は、営業が調整役となり、内部のSE部隊やグループ会社と連携しながら構築していきます。一つの案件に何十人もが関わる中、時には褒めたり鼓舞したりしながら全員とチームになって進められているのは、ゼミでコミュニケーションに関して学んだおかげだと思っています。
「福祉」や「IT」を掛け合わせて考えられる人間に。
仕事ではゆくゆくは地域創生に携わりたいと考えています。自治体を担当する営業部署もあり、広島県の宮島地域では観光を起点とした地域活性化事業を推進中です。それらの知見を得て、例えば、移動手段や見守りなどの課題が明らかになっている過疎地域をモデルケースにNTT西日本がITを使って解決できるようなサービスを組む、将来的にはそういう企画業務もやってみたいですね。
大学3年生ごろまでは、福祉職に就くことへの不安もあって、卒業後は一般企業で働いて社会をもっと幅広く知り、いろんなことを考えられるようになってから福祉の世界へ戻れたら戻りたいという気持ちでした。でも4年生の時に、授業運営を補佐したり履修学生の学習支援を行う「ラーニング・アシスタント」として改めて1、2年生の授業に関わったり、福祉職を目指す後輩と接したりするうちに、福祉に携わる魅力を再認識し、もっと広く深く学んでおけばよかったと後悔もしました。人生のどこかでもう一度、福祉を勉強し直し、副業でも、ボランティアでも何かしら関わりたいという意識はあります。そういう活動が実際の仕事につながっている社員もいますので、福祉だから、ITだからと決めつけず、いろいろ掛け合わせて考えられる人間になれればと思います。そのために、これからもアンテナを張り続けます。