十人十福

Vol.02

自分の「当たり前」を見直し、
相手の「当たり前」を尊重する
大切さを教えてくれた場所。

松本 理佳さん

株式会社リクルート

2019年卒業社会起業学科

社会起業学科在学中は貧困問題をはじめとする社会課題を探究し、海外での学びを経験。卒業後、株式会社リクルートに入社。現在は、企画部門で転職エージェント事業のDX推進に取り組む。人と「楽しい」を共有することが好きで、モットーは「仕事もプライベートも全力投球」。

#仕事#留学

イタリアで受けた衝撃が、社会問題を探究する契機に。

人間福祉学部入学のきっかけとなったのは、長年抱えていた「国内外の貧困問題についてもっと知りたい」という思いです。私は父親の仕事の関係で、幼少期から定期的に海外を訪れていました。イタリアで、幼い私に対して食べ物を乞う現地人に出会って衝撃を受けて以来、もっと世界を知りたいと思うようになりました。高校では模擬国連に参加し、さまざまな国の立場を疑似体験。社会問題に対する意識が高まり、大学でもさらに学びを深めたいと考え始めました。私が通っていた関西学院千里国際高等部には関西学院大学への推薦入学制度がありますが、国内外の社会問題を深く学べる大学や学部を幅広く検討したかったため、入試方法はAO入試(当時)を選択しました。他大学との比較の結果、フィールドワークが豊富で、国内外の社会問題の実情を体験しながら学べる本学部の社会起業学科へ進学しました。

貧困と隣り合わせの国には、全く異なる「当たり前」があった。

社会起業学科での4年間は、興味のあることへ積極的に挑戦し続けた日々でした。特に印象に残っているのは、海外の貧困状況を実際に確かめるために「社会起業フィールドワーク(海外)」に参加したこと。約10日間の現地実習を行い、海外の社会問題を理解する、学科独自のプログラムです。私が訪問したのは、途上国であるタイ。学校や病院などの現地施設を訪れたほか、国連やJICAの現地支部も訪問。職員の方からタイの現状や未来への展望などを聞き、仕事内容についても教えていただきました。フィールドワークの期間中は現地の方々の文化に近い形で過ごしたため、カルチャーショックの連続。遠方へ移動する際も飛行機を使用せずに10時間以上もかけて夜行バスに乗ったり、現地の人が当然のように使用しているトイレが、日本とかけ離れた衛生環境だったり。これまで日本で「当たり前」と考えていたことは、世界にとっての当たり前ではなかったのだと痛感。視野を広く持ち、柔軟に考えることの大切さを知りました。

フランス・リヨンの地で過ごした半年間で、世界の広さを実感。

タイで貧困の現状を目の当たりにして以降、さらに異なる切り口から社会問題を学びたいと考え始めるように。難民問題が深刻視されている先進国、フランスへの半年間の交換留学を決意しました。留学先に選んだのは、社会科学などの専門職分野を学べるリヨン政治学院。授業内容はハイレベルでヨーロッパ圏をはじめとしたさまざまな国籍の学生と密に交流し、強い刺激を受けました。
この地でも、思いもよらない「当たり前」に遭遇。フランス式の講義スタイルは日本とは大きく異なっていました。資料の投影配布は一切なく、学生が好きなタイミングで質問し、思うままに話を広げていきます。さらに参加していたチーズサークルでも活動予定が曖昧であったり、寮の管理人が常駐しているはずが月に1回現れるかどうかなど、自由な国民性を体感しました。リヨンでは英語が全く通じず、街の表記も言葉もフランス語漬けの毎日だったため語学力が向上したことも大きな収穫です。現地のパン屋さんが言葉を教えてくれるなど、日々の生活でフランス語の運用能力が高まっていくのを感じました。

大学時代に身につけた多角的な視野と共感性が、今に生きている。

フランスでの半年間を経て、日本の良いところを改めて実感。日本で就職し、日本社会の役に立ちたいと考え、国内企業を中心に就職活動を開始しました。社会の「不」を解消できる株式会社リクルートに就職し、入社後は法人営業として企業の採用活動の斡旋業務を担当。担当企業の中には、伝統に基づいた採用基準を「当たり前のもの」として重視しすぎた結果、採用活動が上手く進んでいなかった企業もありました。大学時代に身につけた柔軟性を活かし、クライアントが抱える課題の解決に取り組むよう心掛けました。
営業担当として業務を進めるうち、社員一人ひとりが心地よくスムーズに営業できる環境や仕組みを作りたいと考えるように。入社3年目のタイミングで、自ら願い出て企画部署に異動しました。現在は人材部門の新システム導入やサービスのUIUXの設計などを担当しています。日々心掛けているのは、一人ひとりの心に寄り添うこと。理論上では大幅に工数削減できるシステムでも、営業担当者が新しいシステムに慣れるまではかえって時間がかかる可能性も。営業担当が納得して業務遂行できるように営業担当の立場に立って、システムの仕様や運用方法を考え、新しい案件や取り組みを営業組織に繋いでいます。

一人ひとりの「夢中」を進化させる環境が、ここにはある。

社会人となった今、社会のさまざまな課題を自分ごととしてとらえられているのは、大学時代の経験のおかげ。例えば、毎年5月下旬に行われる「関学レインボーウィーク」。当時はあまり内容について意識していませんでしたが、この期間にLGBTQ+などの性の多様さに自然と触れていたことは、社会に出てからもフィルターをかけることなく多様な人とコミュニケーションできる力につながっていると感じます。
この記事の読者には、進学先について悩んでいる受験生もいるでしょう。もし進路を決めかねているなら無理に選ぶのではなく、一歩引いて生活の中で自分が興味のあることを考えてみるのはいかがでしょうか。私自身の学びの出発点も、人に対する興味だったのです。人が好きだったことに加え貧困問題に関心があったため、フィールドワークが充実しており、人との関わりを通して貧困問題を学べる社会起業学科を選びました。人間福祉学部には、一人ひとりの「やりたい!」を後押ししてくれる環境があります。夢中になれるものがある人も、これから見つけたい人も、ぜひ本学部でやりたいことを探求してみてください。