十人十福

Vol.14

力強く、しなやかに学び続ける
ソーシャルワーカー

竹森 美穂助教

社会福祉学科

#ソーシャルワーク

「専門職」であり続けるには?

 皆さんは、「専門職」と聞いて、どのようなことをイメージしますか?医師や弁護士、教員…高度な専門知識や技術を持ち、資格を持って働く職業を思い浮かべることが多いかもしれません。あるいは、たくさん勉強しないといけない、試験に合格しないといけない、社会的な責任の大きい仕事…他にも思い浮かべることがあるかもしれません。
 ソーシャルワーカーも社会福祉の専門職として、大学等で専門教育を受け、社会福祉士、精神保健福祉士を目指す場合には国家試験を受け、人々の社会生活上の困難さに向き合う、重要な仕事の一つです。では、専門職に「なった後」は?何が、専門職を専門職であり続けさせるのでしょうか。

「私は専門職・ソーシャルワーカーとして成長できているだろうか…」

 かつて社会福祉士国家試験に合格したとき、私は周囲の先輩方にこう言われたものです。「資格はスタートライン、これから自分を磨いてゆくのよ」と。
病院でソーシャルワーカーとして働き8年ほど経ち、中堅と呼ばれる頃に差し掛かると、仕事は概ね順調に進めることができるようになりました(それでも失敗や悩みは尽きませんが)。その時にふと考えたのです。「私は、ソーシャルワーカーとして学ぶべきことを、きちんと重ねることができているだろうか…?」
この自分への問いがきっかけで、私はソーシャルワーカーが学び続けること(継続学習)、そのための方法や環境について研究を進めたいと思うようになり、ソーシャルワーカーとして働きながら大学院で学びました。

力強く、しなやかに学び続けるソーシャルワーカー

 実践現場に出てからの学びというと、多くのソーシャルワーカーは「研修」をイメージします。そして、仕事と家庭のことで学ぶ時間がないし、研修にもほとんど参加することができていない…それに、どうやって学べばいいか分からない、という声を耳にします。ところが、現任のソーシャルワーカーにインタビュー調査をしてみると、研修だけではなく、講演会を聞きに行ってみたり、本を読んだり、他機関のソーシャルワーカーとの交流機会を持ってみたり、様々な機会を通じて、知識や情報を得たり、ソーシャルワーカーとしての自分や実践を振り返っていることが分かりました。ソーシャルワーカーは、楽しみながら、そして多様な学びと仕事をうまく関連付けながら、仕事とプライベートを含めた自分の生活の中に、無理なく継続学習を馴染ませているのです。

図

エンパワメント志向の継続学習

 ソーシャルワーカーとして人と社会に向き合うとき、私たちはしばしば怒りや悲しみ、理不尽さを感じ、また社会の不条理に遭遇し、無力感に苛まれることがあります。しかし同時に、人々のしなやかな強さに励まされるものです。私は、人々のしなやかな強さを目の当たりにする機会を得ることが、ソーシャルワークという仕事の魅力の一つではないかと考えています。ソーシャルワーカーとして人々に真摯に向き合うとき、学び続けないではいられないし、学び続ける中で人として磨かれてゆくのだと思います。まさに、ソーシャルワーカーの力強くしなやかな継続学習の姿は、本学のスクール・モットーである“Mastery for Service”「奉仕のための練達」を体現するものといえます。継続学習は、一部のやる気に満ち溢れたソーシャルワーカーだけのものではなく、どのソーシャルワーカーの中にもあるものです。単にスキルを身に着けるということではなくて、ソーシャルワーカーとしての自分に向き合いながら専門職としての資質を磨いてゆくことであって、楽しみながら自分なりのペースで、何より自分自身を大切にしながら進めてゆくことは、自分自身の新たな側面の発見でもあります。
 これは将来社会に飛び立つ学生や、ソーシャルワーカー以外の様々な職業にも、応用可能な考え方です。本学での学び(授業だけではなく、課外活動や人との出会いなど様々なことも含めて)を通じて、生涯を通じて学び続ける自分のための土壌を耕していってほしいと思います。

担当している科目

 私は、主にソーシャルワークの演習や実習に関する科目を担当しています。1年生を対象にしたものでは、「ソーシャルワーク論B」や「ソーシャルワーク実習入門」、「ソーシャルワーク演習Ⅰ」等があります。ソーシャルワーク的思考や実践について様々なワーク等を通じ、皆さんと一緒に学ぶ機会を得ることができれば嬉しいです。


*図は竹森美穂(2021)「ソーシャルワーカーの継続学習に関する研究―保健医療分野のソーシャルワーカーを対象とした調査をもとに―」2020年度佛教大学大学院社会福祉学研究科博士学位論文より引用


※所属や内容は掲載日時点のものです。また内容は執筆者個人の考えによるものであり、本学の公式見解を示すものではありません。